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【働くキョウタナビト】株式会社P.O.ラボ 代表取締役 大井勝寿さん

[2022年12月13日]

ID:87

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2021年に開催された東京2020パラリンピックをご覧になられましたか。そこでは、スポーツ選手の一人一人が生き生きと活躍している姿を見ることができました。

普段、何気なく暮らしている私達ですが、突然、予測しない事故や災害に見舞われ、いつも通りの生活が奪われ、日常生活に支障を来すような障がいを負ってしまうかもしれません。そんな時、歩くことや体を自由に動かしてスポーツを楽しむ等、普段通りの生活や今までとは違う生活も送れるように、その人の体に合った義肢や装具をお医者さんと一緒に作ってくれる仕事があります。京田辺市松井にある株式会社P.O.ラボでは、このような体に痛みや悩みを持つ一人一人のお客様が毎日を快適に過ごせるようなものづくりを第一に考え、より良い義肢装具の研究開発や製造、販売に取り組まれています。

代表取締役 大井勝寿さん

株式会社P.O.ラボ 代表取締役 大井勝寿さんにお話をお伺いしました。

事業をはじめられたきっかけと経緯を教えてください。

一番のきっかけは人のためになることがしたいという思いが漠然とあったのと、ものづくりに興味があり工学系の勉強をしていた大学院の一年の時、高校の同級生の義肢装具会社の就職活動の話でこの業界を初めて知ったことです。それまでは介護ベッド関連の製作に興味があったのですが、義肢装具は、より製作に近い実用性のある具体的なものづくりであり、人のためにもなる分野であるので非常に興味深く思い、1994年に義肢装具会社へ就職しました。そこでたくさんの経験をしていく内に義肢装具師の免許を持っていないと出来ない作業も含め、製品作りに関わる全てを自分でしたいという強い思いから、免許取得のため、退職しました。当時の国立身体障害者リハビリテーションセンター学院で3年間学び、懇願の免許を取得し、別の義肢装具会社で8年間、勤めました。その間、病院の先生や患者さんが喜ばれるのをもっとダイレクトに感じられるものづくりをしていきたい強い思いとそれまでにできた繋がりや技術、お世話になった先生との信頼関係のおかげで、2005年に京田辺で初となる義肢装具を取り扱う会社を起業しました。社名の中に、「会社」ではなく「ラボ」と名付けたのは、固定観念に縛られない独創的な発想を持ち世の中に問えるような研究所「ラボラトリー(Laboratory)」として、従業員みんなで取り組んでいきたいという思いからです。京田辺は当時、高速もでき、第二京阪が出来るという時期で、京都、奈良、大阪等の近隣の取引先へ移動するのも便利な立地条件だったので選びました。



御社のものづくりについて教えてください。

初めてのお客様へ説明する際、義足、コルセット、中敷き、インソール等を作っていますとお伝えしています。旋盤や最新式のオーブンをはじめ、CADやCAM等の工作機械や自社開発の治具等を駆使して一個一個、きちんと患者さんの役に立つ製品を作っています。その中には変形性膝関節症の人に役立つインソールがあり、OEM生産して10万個も販売されています。ほとんどの製品は、各病院で先生と患者さんのニーズに合わせて型取りから完成まで一貫生産しており、従業員の誰でもが作れる仕組みをとっています。また、現場では、患者さんの負担を軽減するため、常に製品を微調整できる道具を持参してその場で細かな手直しをしています。現在は、事務員2名、製作技術者4名、義肢装具士3名とパートの義肢装具士2名で製品の製作に取り組んでいます。

外反母趾の方の足型製作の写真

外反母趾の方の足型製作の様子

外反母趾の方の足型製作と図面
外反母趾の方の足型製作をする写真
外反母趾の方の足型製作をしている写真
外反母趾の方の足型製作の細かな作業の写真

どのように製品は依頼されるのですか

病院経由で受注を受けるのが一般的で、取り引き先の各病院で訪問日程が決まっているので、治療用の場合は、患者さんの必要な採寸等をして会社で作って病院へ納める場合がほとんどです。そして病院の先生のご紹介で他の病院の先生の依頼を受けることや、直接、患者さんの問合せをいただくこともあります。また、他の同事業者で作るのが困難な製品の注文を受けることもあります。

製品完成までの期間はどの程度かかりますか。また、どのような思いで製品開発をされていますか。

製作するものや現場にもよりますが、コルセットはその場で型紙をとり採寸して約1時間半で完成し納めます。靴は型取りから仮靴を作り最終的に合う皮靴を完成するまで1,2ヶ月かかります。義足は、事故もありますが、高齢者の循環器障がいが原因で脚の切断をされることもあるため、今まで歩行できていた機能が衰えないよう状態に合わせて作っています。また、圧迫骨折の患者さんは、高齢者に多いので装具待ち状態で歩行機能等が衰えないように、すぐに使っていただける圧迫用のコルセット「f-HOLD」を開発して製品化しました。そして、脳卒中片麻痺患者さんにもスムーズにリハビリを開始していただけるように「Front」を製品開発して使っていただいています。現在、女性に多い外反母趾の既製品化に向けて病院の先生や患者さんにご協力いただいて様々なデータを集めていて、すべての方々の悩みが解決でき快適な生活が過ごされますように製品開発に取り組んでいます。

圧迫骨折用のコルセット「f-HOLD」の写真

圧迫骨折用のコルセット「f-HOLD」

脳卒中片麻痺患者様の歩行訓練用長下肢装具「Front」の写真

脳卒中片麻痺患者様の歩行訓練用長下肢装具「Front」

製品を作られる上で大変に感じる等はありますか。

いろいろな道具もできているので負担は減ってきてはいるのですが、赤ちゃんや自分で立てない人の型取りをする時に難しいと感じることはあります。特に難治性の患者さんの場合、他の同事業者さんから対応策について教えていただく等して難しい作業についても前向きに取り組んでいます。

最後に事業で大事にされていることと今後の事業展開や抱負をお願いします。

従業員全員がお客様に役に立つものを作り続けられるよう現場のニーズを形にすることを一番大事に考えているため、製品の開発等をほぼ全て一貫生産できる体制をつくっています。今後も、「f-HOLD」や「Front」等のように既製品化することで先生や患者さんへスムーズにその場で調整してお渡しできるような製品の開発をしていきたいと考えています。さらに、最新のデジタルデバイスを使いこなしてアナログの部分と上手く融合した当社だからこそできるものづくりを続けたいです。また、新規製品開発のため、国や市の補助金制度等の有効活用し、D-fab(※)の3Dプリンターで試作品作りを行い完成した製品は展示会で広くPRしてまいりたいと考えています。従業員の募集は、毎年、義肢装具の課程のある専門学校や大学へ義肢装具士の求人案内を出しています。また、必要に応じて、不定期ですがハローワークで求人案内もしています。女性に多い外反母趾や思春期の女の子に多い側弯症の型取りのような対応については、安心して接することができる女性の義肢装具士も増やしていきたいと考えています。

外反母趾既製品化のためのデータ収集用の型取りの写真

外反母趾既製品化のためのデータ収集用の型取り

(※)京田辺ものづくり工房「D-fab」:同志社大学京田辺キャンパスD-eggにあるFabスペース、「市内企業の事業高度化」「創業支援の拠点化」「学研都市技術者間の交流と新産業創出」などを目的として京田辺市、京田辺市商工会、同志社大学、中小企業基盤整備機構、関西文化学術研究都市推進機構の協力により設立、3Dプリンター、レーザー加工機等のものづくり設備を利用できる会員制の施設

インタビューを終えて

大井社長の「人のためになる、本当に役に立つものを大切に一から全て自社で作りたい。」という強い思いと従業員のみなさんが一丸となって、様々な状況に応じたきめ細やかな製品作りをされていることや同じ業種の方々との交流を通じて技術を高める勉強会をされていること等、常によりよい製品づくりを追求されていることをお伺いできました。さらに、従業員が仕事以外でも何か挑戦したいと思う事を形にして追求していくことを応援して、公私ともに働きがいのある会社「ラボ」であり続けたいとの社長の熱い思いもお伺いし、今後、予測していない事が起きたとしても、誰もが安心して生きることの喜びに繋がる製品作りを続けていただけると期待しております。

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京田辺市役所経済環境部産業振興課

電話: (産業支援)0774-64-1364(商工観光)0774-64-1319

ファックス: 0774-64-1359

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