【働くキョウタナビト】「光興業株式会社」代表取締役 三宅 智加さん
[2024年11月29日]
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ICT(※)の利活用が急速に進む今日、パソコンやスマートフォンなどのモニターを利用する時間は増加し、眼精疲労など眼の疲れをはじめとする健康被害が社会的な課題となっています。京田辺市飯岡にある光興業株式会社では、職場や教育現場、家庭などでのモニターユーザーの健康を守るための各種画面用フィルターの開発・製造・販売を行っています。
(※)ICT:「Information and Communication Technology」の略。情報通信技術。
光興業株式会社 代表取締役 三宅 智加 さん
高度成長期の昭和44年(1969年)、父(昭和7年生)が飯岡で創業しました。自身が生まれ育った飯岡の地に特段の思い入れがあったのだと思います。当時は大阪万博の前年で、ブラウン管テレビの急速な普及とともに子供の視力低下や電磁波の身体への影響が問題視され始めた時代です。父は、どのようにして子供の眼を守っていくかという観点から、テレビモニター画面のフィルターを中心に開発・製造・販売を始めました。働く女性を電磁波から守るためのOAエプロンの販売にも着手しました。自身のアイデアをもとに、製品を生み出すことに常に一生懸命で、四六時中製品のことを考えているような人でした。パソコンが普及し始めた当初は、まだブラウン管ディスプレイで、X線の身体への影響などが問題視されており、それらに対応できる商品の開発・製造も始めました。その後のパソコンの普及・開発・進化に伴って、VDT(※)も液晶モニターが主流となり、現在ではTVを含めて種々のモニターに適した画面用高機能フィルターの開発・製造・販売をしています。今年で創業55年になります。
(※)VDT:「Visual Display Terminals」の略。画像情報端末。
本社工場
パソコンの普及や進化に伴ってICTの利活用が急速に進んできました。VDTのモニター画面も多様化しています。こうした中、長時間にわたる職場でのVDT作業が、眼精疲労やドライアイなどの眼の疲れをはじめとする健康障害を引き起こす事例が増え始めました。厚生労働省は、平成14年(2002年)以降「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」や「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を制定して、作業者のためにディスプレイの反射防止や視力等の心身に与える影響に対して対策を行うよう求めていますが、当社ではそれ以前から職場環境を改善するための多様な種類のディスプレイフィルターを開発・製造・販売してきました。
教育現場においても文部科学省がICTを活用した教育に力をいれており、平成31年(2019年)にはGIGAスクール構想(※)を開始、令和3年(2021年)には全国の児童・生徒に1人1台のパソコンが導入されました。併せて、「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」が作成され、ICT化とユーザーの健康を守る取組を同時に進めていくことが求められています。
昨今では、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの液晶モニターから発せられるブルーライトによる健康被害も指摘されています。文部科学省の上記ガイドブックでは、ブルーライトの削減だけでなく電子黒板やタブレット画面への映り込みや光の反射防止など学習環境の改善が求められており、具体的な改善方法としてフィルターを取り付けることなどが提言されています。
また、マイナンバー制度の導入などによって以前にも増して個人情報やプライバシーの厳重な管理が求められるようになっています。このような状況の中、情報セキュリティの重要性が高まり、プライベートな情報を取り扱う職場では、のぞき見防止の機能を持つフィルターへの需要が増えています。
(※)GIGAスクール構想:教育におけるICT環境の充実を図り、教員や児童生徒の力を最大限に引き出すことを目指す取り組み。
タブレット端末、ノートパソコン、デスクトップパソコンから大型液晶テレビまであらゆるVDT画面に対応する画面用フィルターとこれらをVDT機器に取りつけるための部品の開発・製造・販売を行っています。画面用フィルターの機能は、のぞき見防止、画面保護、ブルーライトカット、反射防止、抗菌・抗ウイルスなど多種多様で、取り付けるパソコンやモニターの種類ごとに多彩なラインナップを取り揃えています。大量生産ではなく、顧客のニーズに応じてカスタマイズした商品で、現在5,000以上の種類を取り揃えています。
【イージーフィットフィルム】
表示画面に気泡が発生せず、簡単に取り付けできます。
【マグネット式覗き見防止フィルター】
付属のマグネットの吸着で取り付けるので、取り外しも簡単にできます。打ち合わせの時など、必要に応じて取り外し、隣の人と一緒に画面を見ることができます。
注文をいただいてからその仕様を詳細に確認し、その内容にカスタマイズした商品を生産、検品、梱包、出荷となります。従来の製品のラインナップの中にお客様の要望に沿うものがない場合には、特注品として対応しています。
素材裁断前の裁断機の準備を行っています。
前述のような時代背景もあって、中央官庁をはじめとする全国の官公庁や教育機関や企業で採用していただくことが多いですが、個人でもHPの問い合わせ欄やECサイトを通じてご注文いただき、リピーターの方も多数いらっしゃいます。依然としてVDT症候群に悩まされている方は多く、その改善策のひとつとして当社の製品をアピールしていきたいと思っています。VDT症候群に詳しい医師の紹介で当社の製品を購入・使用されたところ、症状が改善したとの事例も報告いただいており、嬉しく思っています。
また、ある公法人でデスクトップパソコン200台に採用していただいた際に使用前後のアンケートを実施した結果、多くの方から目の疲れが軽減されたなど、効果が実感できたとのお声をいただいております。発送エリアは、離島も含めて北海道から沖縄まで全国各地にわたっています。先日、Eスポーツイベントの運営会社の方が急ぎで当社の商品がほしいとのことで東京からお越しくださいました。数ある中から当社の製品を選んでいただき、遠方にも関わらずここまでお越しいただいたこと、とてもうれしく思いました。
主要な機器のサイズに合わせた標準タイプの製品に加え、お客様の利用されている機器に応じたカスタムメイドの対応をしています。機能、サイズ、取付方法などのいかなる要望にも、小ロットから対応出来るように多種多様な商品を開発しています。取り付けが難しい場合には、可能な方法を考案して提案し、可能な限り早い納品を心掛けています。
また、約2週間のサンプルのテスト使用を基本対応としています。カタログだけではよく分からないとのお声もあるので、「実際にお使いいただき、気に入っていただけたましたら、お買い求めください」とご案内しています。
【大型液晶テレビ用反射防止フィルター】
外光の反射や照明の映り込みを防いで見にくさを解消します。
【湾曲モニター用覗き見防止フィルター】
表示面積の広い大型で横長のモニター画面ののぞき見を防止します。
当社には、業務部、製造部、営業部の3部門があり、従業員数は入社3年目から39年目までの13人です。業務・製造部では、状況に応じて複数の仕事内容に対応できるように多能工を目指して教育しています。
各部署では、毎年、各自で目標を設け、それを達成するためのスケジュールを立てて業務に取り組んでいます。また、毎月の取組として、うまくいったことを週単位で振り返り、それをノートに記録して提出してもらっています。うまくいったことに着目することで自己肯定感を高めて、前向きに業務に取り組んでほしいとの考えで行っています。他に、社員同士でお互いに「ありがとう」の感謝の気持ちを伝える「サンクス制度」を実施して、社内のコミュニケーションの活性化を図っています。
「サンクス制度」の様子
社内にシートを掲示して社員が自由に書き込み、閲覧できます。
当社は、フィルターの開発・製造・販売を通じて、安全・安心で快適な職場環境と教育環境づくりに邁進してきました。職場・教育現場・家庭において、子供から大人まで多くの方々がVDTの使用によって目を酷使している今日、一層の需要増加を想定して、作業の効率化と生産力の増強のため、8月に大型設備を導入しました。また、新しい市場を開拓しつつ、顧客ニーズに一層柔軟に対応していきたいと思っています。テクノロジーによる生活の発展と私たちの健康を守ることは両立されなければなりません。創業者の思いを引き継ぎながら、「高性能で目に優しく健康を守るフィルター」をこれからも末永く提供していきたいと考えています。
展示会にも積極的に出展して自社製品をアピールしています。
前職は調剤薬局で医療事務をしていましたが、ご縁があって入社しました。一般事務はほとんど経験がなかったので最初は不安でしたが、必要なことはこれから学んでいこうと前向きな気持ちで飛び込みました。業務課は営業課と製造課の中間に位置する部署で、受注入力と出荷日の調整を主に担当しています。お客様からのお問い合わせや出荷準備なども行っています。
当社で身についたことは、今のやり方がベストか?を常に考えて、改善する前向きな姿勢です。少人数の会社だからこそ、社員が柔軟にアイデアを出して相談し、必要に応じて新しいやり方にシフトチェンジが可能です。この環境がやりがいをもって仕事ができる理由だと感じています。
業務課 奥田 真子さん
日々進化するマルチメディア時代に柔軟に対応しながら、多種多様な商品展開に加え、新製品の開発・製造を続けてこられた姿に創業者から引き継ぐ「みんなの健康を守りたい」との熱い思いを感じました。これからも従業員のみなさんと共に私たちの健康を守る製品づくりを期待しております。