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【働くキョウタナビト】伸栄工業株式会社 代表取締役 榊田未央さん

[2022年10月26日]

ID:86

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地球温暖化防止のため、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指した取り組みが世界的に必要とされています。鉄やアルミなど金属部品を多く使う自動車や航空機をはじめ、スポーツ・レジャー用品などに使う部品を軽量で高強度な特性を持つ炭素繊維複合材に置き換えることは、軽量化や省エネ効果等のCO2削減につながります。しかし、炭素繊維複合材は高強度なため切削加工がしづらく、細かな粉塵を工作機械が嫌うこと、材料が高価であることなどが要因で、取り組んでいる会社は全国的にも多くはありません。京田辺市にある伸栄工業株式会社では、創業時から積み重ねてきた経験により、この取扱いの難しい炭素繊維複合材をはじめとした特殊素材等で、お客様のさまざまな要望に合わせた製品作りを取り組み続けられています。

代表取締役 榊田未央さん

伸栄工業株式会社 代表取締役 榊田未央さんにお話をお伺いしました。

事業を始められたきっかけと会社を継がれた経緯を教えてください。

1985年6月に先代の父が伸栄工業として、父と祖父の名前から1文字ずつ取った社名にして創業しました。創業当時は、電子回路やプリント基板の加工をしていましたが、事業の拡大で人手が急に必要となったため、私が入社することになりました。それまでは、美容師の免許を持っていたので美容師の仕事をして退職後、京田辺市商工会館の受付業務をしていましたが、子供の頃から自宅の敷地内で仕事をしていたこともあり、仕事内容は把握していました。

今までとは違う仕事内容でしたが、先代の父より1から仕事のさまざまなことを教わり、内容によっては受注先の会社で技術指導等の研修を受ける等、オペレーターとして経験を積ませて頂きました。2009年伸栄工業株式会社として法人設立後、現場で共に働いていたこともあって父の他界後、6年前に事業継承し代表取締役になりました。




御社のものづくりについて教えてください。

現在、事業は3つの部門があり、カーボン加工事業、表彰用の楯板の製造とアクリル製品の企画開発製造を行っています。事業全体の半々くらいは、主力のカーボン加工事業と表彰用楯板の製造になります。アクリル製品は、現在、取引のあるお客様の要望に合わせて製作しており、全体の1割前後です。創業当初から、電子回路やプリント基板の板物の加工を長らく行っていましたが、お客様の需要に合わせ、カーボン材を中心に特殊素材にしぼり、平面加工を行ってまいりました。最近は立体加工の需要も増え、マシニングセンタ(※)を使用して立体物の切削加工も行っています。先代の時に築いたお客様との信頼関係のおかげで、継続的に受注をいただいております。新規の受注に関しては、お客様から技術指導を頂き、共に作らせて頂くこともあります。試作品や一点物、量産の受注もありますが、少人数のため臨機応変に予定を立てながら、お客様の要望に対応したものづくりを心がけております。

 (※)マシニングセンタ:加工に必要な工具を自動で交換出来る機能を備え連続して様々な加工が出来る工作機械

カーボンの切削加工をしている様子

カーボンの切削加工の様子

どうしてカーボン事業を主力にされはじめたのでしょうか。

カーボンは、鉄の部品よりも硬く軽量化できるので、とても注目されていますが切削加工がしづらく、加工時に出る粉塵やその粉塵が機械に入り込む等で他の製品加工とは一緒の機械で取扱うのが難しく取り扱う会社が少ないのが現状です。そのため、当社では当初一部のお客様の要望で取扱いをはじめましたが、時代の流れもプラスに働き、幅広いお客様より要望をいただくようになったため、現在では主力となっています。

カーボン事業ではどのような部品を作られて、お客様と取引されていますか。

趣味に使う車のラジコンの部品や釣り具の部品の加工、X線レントゲン装置の関連部品等を製作しています。趣味のラジコンなどは機種の更新が多く、常に新しいバージョンの製作が続いていきます。カーボン材の加工を行う会社が多く存在しないため、創業時からのお客様をはじめ、ホームページやお客様からの紹介など、お問い合わせ先は全国からとなります。

カーボン材については素材の調達が難しく高額なため、お客様が国内で手配された支給材と共に受注をいただいています。貴重な材料のため取扱いやミスを防ぐ等、細心の注意を払い丁寧な仕事を心掛けており、お客様より評価をいただいております。

カーボン部品の展示用見本 歯車

[カーボン部品の展示用見本]
歯車

ラジコンシャーシ・スケール

ラジコンシャーシ・
スケール

釣り具の部品

釣り具部品

表彰用の楯板はどのように製造するのですか。

繊維化した木材を固めて作るMDF材を、必要な大きさと形状に製作してフイルムを貼り、飾りとプレートをつける前の楯板の状態に仕上げて完成させます。お客様の要望に応じて、フィルムやシートを揃えています。コロナの影響で表彰が出来ず、受注が落ち込みましたが、少し回復傾向にあります。今後は少量での生産体制の構築が必要になってきます。

表彰用の楯板

表彰用楯板

アクリル製品は、どのようなきっかけで作られたのですか。ISJとはどのような技術ですか。

アクリル製品は、お客様のところでたくさん余っていたアクリルの端材で「何か作れないか」と試行錯誤したのがきっかけです。現在はお客様の要望に合わせたオーダーメイド商品を製作しています。アクリル材は接着の際に気泡が入りやすく、接着には技術が必要です。弊社ではアクリル材の勘合に「ISJ」という技術を使用しています。「ISJ」とは「インナースリットジョイント」の略です。この技術で、接着剤を使わずにアクリル材の組立が可能となりました。接着材を使わないこと、繰り返し分解して使えることは環境への配慮にもつながると考えました。持ち運び用途のディスプレイや分解して収納することができる製品としてお客様へ提供させて頂いています。

実験用の装置

実験用装置

展示用のアクリルケース

展示用アクリルケース

ものづくりをする上で大事にされていることは何でしょうか。

先代から、「働き方の創造。常に自ら考えること」を教えられてきました。そのため、先回りして準備することが社内の風土になっています。例えば、頂いた図面に誤りがないかなど、言われたことをそのまま受けるのではなく、自ら考え少しでもお客様の手間がはぶけるよう心がけています。そのため、ホームページやインターネット上でのお取引はせず、実際にお客様とお話する等、少しでもコミュニケーションを多くとることを優先しています。

最後に事業で大事にされていることと今後の事業展開や抱負をお願いします。

カーボン事業が当社の強みになっているので、展示会の出展を積極的に行う等、営業活動を通じて、より発展させていきたいと考えています。この事業を基盤に、お客様とも長い取引の中で、人生100年時代とも言われていますので、時代に合わせた柔軟な対応で、ものづくりをしていきたいと考えております。当社の理念「ものづくりを通じて人を思う心を育て、従業員とお客様の幸せを実現する」を掲げ、今後もお客様と従業員が幸せになるような企業づくりを考えています。

これからも、常にたくさんのお客様の生の声をお伺いして、これを強みにした長いお付き合いの取引を大事にしていきたいと考えております。各事業の業務は、担当制ではありますが、コロナの影響もあり、多能工化を進めています。従業員の経験が必要な部分が多々ある技術面では、長期目線で基盤を作っていくことが今後も重要だと考えています。

現在の従業員は、私の入社した18年前からのメンバーが多く、正社員は4名、パートアルバイトが2名です。長いお付き合いのあるお客様との取引も、少数精鋭で密に対応しています。今後は、設備の強化の対応や次世代に技術を引き継いでいくためにも、新たな人材の採用を検討しています。

インタビューを終えて

榊田社長から先代の大事にされてきた教訓や理念を常に心がけたものづくりに励んでこられているお話をお伺いできました。そして、入社当時から一緒に働く従業員一人一人の働き方や引退後の過ごし方も含め、よりよくなる毎日を過ごせる会社であり続けていきたいとの熱い思いもお伺いできました。今後も少数精鋭で従業員の皆さんと共にコミュニケーション力を強みにお客様の要望に合わせた柔軟なものづくりに励んでいただけると期待しております。

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電話: (産業支援)0774-64-1364(商工観光)0774-64-1319

ファックス: 0774-64-1359

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