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【働くキョウタナビト】「アクチュアライズ株式会社」代表取締役社長&CEO 松岡靖史さん、 取締役・研究開発本部長 奥村直毅さん、取締役・最高科学責任者 小泉範子さん

[2026年1月27日]

ID:129

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同志社大学京田辺キャンパスにあるD-eggは、独立行政法人中小企業基盤整備機構、京都府、京田辺市、同志社大学が連携して運営している起業家育成施設です。

大学の技術や知見を活用し、起業家の育成や新規事業の立ち上げを多角的に支援することで新産業の創出や地域産業の発展を目的として設置されました。

このD-eggにあるアクチュアライズ株式会社では、同志社大学生命医科学部での研究シーズをもとに大学発ベンチャーの強みを活かし、眼科医療の未来を拓く研究開発を行われています。

奥村 直毅 さん、 松岡 靖史 さん、 小泉 範子 さん

代表取締役社長&CEO 松岡 靖史 さん(中央)
取締役・研究開発本部長/同志社大学生命医科学部教授(眼科医) 奥村 直毅 さん(左) 
取締役・最高科学責任者/同志社大学生命医科学部教授(眼科医) 小泉 範子 さん(右)

1 はじめに、長年にわたって眼科医として角膜内疾患の研究に取り組んでこられた奥村教授と小泉教授にお伺いします。

「角膜」とは、どのようなものでしょうか。

人間の五感のうち最も情報収集量が多いのは視覚と言われており、日常生活においても重要な役割を担っています。

角膜はいわゆる「くろめ」と呼ばれるところを覆うもので、車のフロントガラスに例えられる眼球の一番前にある透明な組織です。角膜は、光を屈折させて眼球内に導くことと外界から細菌や化学物質の侵入を防いで内部を保護することが主な役割ですが、外の光を取り入れるためには透明であることが必要です。この透明性を保つために欠かせないのがその内側にある「角膜内皮細胞」です。


【目の構造】

【角膜と角膜内皮の図】

加齢や病気、あるいは手術などの影響で角膜内皮が傷み、角膜が白く濁ってしまうと視力が低下してしまいます。このような状態を「水疱性角膜症(すいほうせいかくまくしょう)」と言います。角膜は、他の組織にはない特徴を持っているため、これまでの医学では角膜の代替となるものを作ることができませんでした。そのため、亡くなられた方から角膜をご提供いただいて行う角膜移植が唯一の治療法です。しかしながら、ドナー角膜は世界中で大幅に不足しており、数少ないドナー角膜が提供される順番を待たなければなりません。こうした状況を研究によって解決したい、というのが私たちの研究のスタートラインです。

【健康な目】

【水疱性角膜症の目】
角膜が白く濁って視力が下がります。

具体的な研究内容について教えてください。

角膜移植は、世界で年間約20万人の患者さんに対して行われている移植医療ですが、ドナー角膜は圧倒的に不足しており、移植を必要としている患者70人に対して1人しか手術を受けることができないのが現状です。残りの69人は、視力の悪いまま人生を過ごすほかありません。日本でも、ドナーと移植を待つ人をつなぐアイバンクのおかげで患者さんに角膜が提供されていますが、国内ではまだまだドナー不足で、半分以上は海外からの輸入に頼っています。

私たちはこの状況を解決したい、そしてより多くの方々を救いたいとの思いから、角膜移植手術に代わる新しい治療法の研究を長年続けてきました。その一つは、ドナーから提供された角膜から分離し、体外で増やした角膜内皮細胞を注射で角膜の内側に移植することで角膜を正常に戻す再生医療の研究です。現在では、一人のドナー角膜から50人以上の患者さんに移植できる量まで角膜内皮細胞を増やすことに成功しています。もう一つの研究は、角膜が白濁するまで病気が進行しないようにする点眼薬の研究です。現在は、米国など外国で「フックス角膜内皮ジストロフィ」という病気を対象に効果を確かめる臨床試験を行っています。

※フックス角膜内皮ジストロフィ:加齢と共に角膜内皮細胞が減少し、角膜が白く濁る進行性の遺伝性疾患

再生医療により世界のドナー角膜不足を解決できる!

起業に至った背景など教えてください。

同志社大学京田辺キャンパスに2008年(平成20年)生命医科学部が開設されました。近年の医療や福祉、健康への関心の高まりを受けて、工学の実績とノウハウをもとに医学と工学の融合領域の研究を目的としています。現在、私たちはここを拠点として研究しています。大学での研究は、様々な基礎研究を行い、学会で論文発表を行うのが一般的ですが、それだけでは新しい治療法を患者さんに届けることはできません。研究成果を学会や論文で発表するだけでなく、私たちが研究開発したものを「新たな医療、治療法として患者さんのもとに広く届けたい」との強い思いから2018年(平成30年)に立ち上げたのが、同志社大学発ベンチャー企業「アクチュアライズ」です。

「実現する」という意味のacutualizeにeyesを合わせて「目に関する社会課題の解決を実現する」との思いを込め、社名を「actualeyes」 としました。メンバー全員で意見を出し合って決めた思い入れのある社名です。

 


製品として、また患者さんが使える治療法として社会に還元するためには、いくつもの障壁を乗り越えなければなりません。例えば、安定的に製品を供給できる製造法を確立し、その製造した製品の安全性について動物を使って確かめる必要があります。さらには人を対象として安全性と薬効を確かめる治験と呼ばれる臨床試験を行い、医薬品として国の承認を得る必要があります。そのためには膨大な時間と資金が必要で、その他事務的な作業や法律にのっとった手続きには多大な労力を要することから、私たち大学教員だけで全てをこなすことは困難です。そこで、新しいフェーズに行くために、新薬の承認手続きのプロフェッショナルである松岡社長をはじめとして、経営や知財などの専門領域の知識や経験のある方々の協力を得ながらワンチームで目標に向かって日々邁進しています。

日本では、大学での研究成果を大企業に引き継いで実用化してもらうことが主流ですが、世界的に見ると、大学の研究者自らがベンチャー企業を設立して研究成果を事業化・実用化し、社会に還元するのが一般的です。自分たちの手で開発をスピーディーに進め、より確実に患者さんに研究成果を届けるには、起業が近道だと判断したのです。ベンチャーとして起業したのは、何か特別なチャレンジをしているという思いはなく、研究の途上でとても自然な流れ、自分たちの研究の延長線上にあったという感じです。

2 次に松岡代表取締役社長にお話を伺います。

製薬会社を経て数々のベンチャー企業に関わってこられた経験や視点からのお考えをお聞かせください。

日本の医薬品は、そのほとんどが輸入品で、国内で開発されて国内の製薬会社が製品化した例は多くはありません。だからと言って、決して日本の研究開発が遅れているわけではなく、優れた研究をしている研究者も非常に多いと思います。先程、世界的には大学の研究者がベンチャー企業を設立して研究成果を事業化するのが主流、との話がありましたが、日本においても仕組みや体制ができて土壌が整えば、海外のように成長できる種はたくさんあるのではないでしょうか。ベンチャー企業は、製薬会社とアカデミアの間に位置しています。製薬会社では取り組めないような開発を実用化していくための仕組みが整い、周りのサポートがあれば、日本のアカデミーの研究も今後もっと世の中で使われていくまでに成長できるだろうと思います。

研究体制について教えてください。

当社は、小泉教授と奥村教授のティッシュエンジニアリング研究室(2008年に同志社大学生命医科学部医工学科に設置された研究室)と共同で研究開発を行っています。当社の研究員は2人ですが、修士課程の研究室には約10人の学生が所属しています。アクチュアライズでの開発段階で生まれた様々な課題を研究室で学生と研究員が協力して解決することもあります。

当社の研究員は、製薬メーカーなどの第一線で活躍してきた人材ばかりですが、一般的な企業とは違って少人数で運営しているベンチャー企業なので、何かに特化して研究するというやり方ではなく、どんな研究であっても幅広く対応してもらっています。新しいことにもどんどん挑戦し、その中で成長してもらえる環境だと思います。学生も数ある研究室の中からここを選んできてくれており、将来の明確な目標に向かってとても熱心に研究に関わっています。学位のための研究に留まらず、企業との共同研究に参加し、アカデミアとビジネス双方の観点を学ぶことは社会で役立つまたとない貴重な経験となるでしょう。その意味でも、学生にとっての大学発ベンチャーの存在はとても大きく意義あるものだと感じています。京田辺から世界に発信していこう!という大きな夢を持って輝いていてほしいですね。


【研究室の様子】 

現在の研究段階と今後の展望について教えてください。

創業から7年、角膜内皮細胞の再生医療は日本での最初の段階の治験を終えており、国からの承認を得るための最終段階の治験を開始する準備を進めています。また、この技術について既に中国の製薬企業と独占的ライセンス契約を締結しており、中国での治験を開始する準備が進められているところです。一方、点眼薬については国内製薬会社と共同で米国などでの治験を行っているところです。

これまで成長し続けている要因は何でしょうか。

「患者さんに新しい治療法を届けたい」ということが最大のモチベーションであり、目標です。この思いを共有できる仲間とともにひとつの目標に向かって、数々の困難や課題を乗り越えてきました。ベンチャー企業にはリスクもありますが、社会を前進させる不可欠な存在です。これからも、角膜移植を必要とする患者さんが再生医療により治療できるよう、アクチュアライズのメンバー、学生、大学と志をひとつに研究を続けていきたいと考えています。

3 研究室の学生さんにお話を伺いました。

後列左から 小泉さん 松岡さん 奥村さん
中央    石田さん(4年生)
前列左から  山田さん(4年生)  東瀬さん(修士1年生)  野田さん(修士2年生)

「先生方の指導のもと切磋琢磨し、大学の4年間や大学院での2年間を通じて、大変貴重なスキルを身につけることができました。試行錯誤しながら、主体的に正解を見つけていく過程そのものが楽しいです。研究の結果が出ずに苦労することもありますが、結果が出た時の喜びは何物にも代えがたいです。こうして得た成果を積極的に社会に向けて発信していくことの大切さも日々実感しています。」

 


インタビューを終えて

角膜疾患の社会的な課題解決に向け、新しい治療法の確立を目指して大学と企業の枠を超えて日々研究を続けておられる姿勢に感銘を受けるとともに、アカデミアとビジネスの橋渡し役としての重要な役割について伺うことができました。

治験が順調に進んで医療現場での実用化が実現し、多くの患者さんにこの画期的な治療法が届くことを心より期待しております。

お問い合わせ

京田辺市役所経済環境部産業振興課

電話: (産業支援)0774-64-1364(商工観光)0774-64-1319

ファックス: 0774-64-1359

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