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【働くキョウタナビト】「ケンファッション」代表 渡辺 謙一さん

[2024年7月25日]

ID:102

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様々な色や形のデザインや機能を持つ服やカバン、靴、帽子。これらの使い心地や肌触りは、素材に左右されるといっても過言ではありません。素材の種類は多岐にわたりますが、中でも布生地を使用した製品は、天然繊維、化繊、合繊など多種多様な糸の組み合わせや染め、織り方によってそれぞれの用途に適したものに仕上がります。京田辺市薪にあるケンファッションでは、原材料の手配から糸の染めや織りまでの各工程を関係先と連携して、オリジナル生地の企画製造販売をしています。

ケンファッションの 代表 渡辺 謙一さん

ケンファッション 代表 渡辺 謙一さん

ケンファッション 代表 渡辺 謙一さんにお話をお伺いしました。

事業の経緯と入社のきっかけについて教えてください。

創業は1980年に先代の父が枚方の楠葉で始めました。元々、糸商(※1)に勤めていたのですが、これからの時代は、糸だけでは生きていけないと考え、糸を使った布の商売を始めました。当時、私は継ぐことは、考えておらず、むしろ、華やかな仕事をしたいという思いがあり、1991年大学卒業後、広告会社で4年間、勤務したのですが、時代の流れもあってなのか、実際は自分の思い描いた華やかな仕事ではありませんでした。そんな時、東京で父の手掛けた新商品の出展があり、取引先と視察をしてきたという話を父から聞いたときに、家業に対して地味な仕事だと思い込んでいた私の気持ちが、一変しました。父の仕事は、お客様に見ていただき、喜んでいただける、とても華やかな仕事であることに感動しました。これをきっかけに、1997年4月から父の仕事を一緒にすることに決めました。楠葉から京田辺に移転したのは、それまでは父が一人で商売するために家の一部を事務所にしていましたが、私が一緒にすることで、手狭になり、物件を探したところ、条件に合う現在の場所が見つかったからです。

(※1)糸商:生地メーカー、アパレル卸企業等に縫い糸、手編み糸、手芸糸を含まない織糸、ニット糸等の卸売りをする卸企業


事業内容を教えてください。

各メーカーや企画会社へ当社オリジナル資材の製造販売をしています。お客様の要望に合う生地を完成するために、原料糸の購入をはじめ、その糸の染めから織りまでを一貫して行っています。完成した生地は主にカバン、靴、帽子等、多岐にわたります。

オリジナル生地の一部
オリジナル生地を使った履き物、ブーケ、カバン、帽子
オリジナル生地の一部(左)、オリジナル生地を使った履き物、ブーケ、カバン、帽子(右)

御社の技術や取り組みについて教えてください。

創業当初からお付き合いのある糸は糸商、染は染会社、織りは機織り会社で、当社の指示書に基づき作り上げていますので、当社に特別な設備機械があるわけではないです。ただ、糸商の方から、新しい糸ができたとき等に相談を受けて、アイデアの提案やその糸で、オリジナルのサンプル生地作りをしております。また、お客様からの相談で、いきなり生地を織るのが怖いという場合にはチップ見本を作る等、柔軟に対応しております。

糸と木箱
オリジナルのサンプル生地
糸と木箱(左)を使い織ったオリジナルのサンプル生地(右)

製造工程と従業員さんについて教えてください。

従業員は、家族従業員の妻だけです。製造工程の全ては、信頼のおける外注先に任せています。まず、当社で企画作成した指示書に基づいて生地製作に必要な糸を京都の糸商から買い、その糸を京都の染め会社で、染めたのを機織り会社で、経(たて)、緯(よこ)の打ち込み本数や平織り、綾織り、もっと柄の入った織り方等で、生地を織り上げ完成してお客様へ納品します。

どのように糸や布の知識を得られてきたのですか。

一から知識を学ぶというより、先代が、私の好きなように事務所のいろいろな糸を自由に使わせてくれ、生地のチップ見本を作ることやそのチップ見本を実際の織機で生地を作ってくれたこと、私の選ぶ糸と糸の組み合わせ方次第で、いろいろな生地ができあがっていく経験ができたことから、段々、仕事への興味も深くなり、どんどん知識を得ることができました。元々、面白いことを企画することが好きだったこともあり、自分で考えて、手を動かすことが好きだったから早く身に付いたとも思っています。


どのようなお客様と取引されているのですか。

元々、先代からつながりのあるお客様が多かったのですが、当社の事業は、お客様が探し求められている特殊なケースも多いこともあり、私が継いでからは、お客様からの紹介やネット販売で取引のあるお客様へサンプル生地を送ることで取引に至るケースも多くなっています。また、最近ではギフトショー(※2)の出展をきっかけにお客様との新たな出会いも増えています。

(※2)ギフトショー:小売りや卸等の雑貨流通業者に向けた見本市のこと


お客様に送るサンプル生地
令和6年3月に出展した京都のギフトショー

お客様に送るサンプル生地(左) 令和6年3月に出展した京都のギフトショー(右)



ケンファッションという社名の由来を教えてください。

創業時、先代が私の名前を入れ、「ケンファッション」としました。小学生時分は、自分の名前を変えたいくらい嫌でしたが、お客様をはじめ皆様に馴染みのある社名でもあるので、入社5年目に事業を継承した後もそのまま引き継いでいます。

ものづくりへのこだわりは何ですか。

一貫して、「メイド・イン・ジャパン以外には、こだわらないことへのこだわり」というのが、一番のこだわりです。とにかく、日本でものづくりをしたいというこだわりさえあれば、日本で完結できるからです。例えば、同じ原料の糸で、海外製よりも日本製の方が高くても、あえて日本製を選ぶということに常にこだわっています。意地ですね。日々の食べ物とは違い、なくても困らないものですが、人の暮らしの中で大切な部分を売っていると思っています。オリジナルで企画製造販売していることもあり、当社だけではなく仕事を通じた各関係先々の会社を守っていくことも考えています。「みんなでやっていければ」という強い思いを持ち続けて日々、取り組んでいます。

御社の強みや特長は何ですか。

時代の流れもあり、どんな業界でも、小ロット多品種が主流になっています。当社は、創業当時から小ロット多品種に対応してきたので、お客様の様々な要望に合う糸の発注から織物の仕上げまでの全工程において、非常に柔軟な対応ができるのは、大きな強みであり特長でもあります。織物においては、経(たて)がかかっているものに緯(よこ)に何か入れる作業は比較的簡単なのですが、小ロット多品種に対応する経(たて)を作るのは大変難しいものがあります。お客様の要望どおりに仕上げるには、非常に手間がかかるので敬遠されがちですが、当社では機敏に対応できるのが強みです。このような強みのおかげで、お客様からの「こんなことできませんか。」というご要望がより多くなってきています。

生地を完成するまでの期間を教えてください。

生地の完成までに1ヶ月半から2ヶ月くらいが多いです。年間で見ると、ファッション業界においては、カバンや靴、帽子といった夏物は比較的売れますが、冬物は売れないことが多いです。最近、インテリア関係先との話もありますが、対光や防炎の諸条件に合う生地を打ち出さないといけないので、現在、当社が製造している生地を変えていくという課題があります。話が決まってくれば、より上手くシーズンを循環していけるのでは、と考えています。


今後の人材採用について教えてください。

現在、2名でオリジナル生地の企画、製作、出荷をしています。今後も、お客様やエンドユーザーの方々に喜んでいただきたいと考えているので、当社の仕事に興味を持って、本当にやってみたいと思う方につないでいきたいと考えており、将来的にはより良い人材を求めています。必要な知識等は、私がそうだったように、お客様等から教えていただくことが多く、特に心配はありません。

今後の事業展開をお聞かせください。

お客様からいただく仕事だけでなく、そのお客様へ当社から仕事をお願いできるようにしていきたいです。例えば、当社の取扱製品は、生地という形の半製品ですが、「この生地、良いですね。」とお話をいただいた際に、希望される製品を作る会社を紹介することで、お客様とのつながりを広げていきたいと考えています。ただ単に取引していただく関係ではなく、企業間連携による事業展開を考えています。

環境に配慮した取り組みについて教えてください。

抗菌や消臭の性質を持つ天然繊維の葦糸を使った生地を当社で作り、これを知り合いの会社の技術と連携することで、消臭シートを商品化したものがあります。これは、子供靴の生地として採用されました。環境問題を考えた取り組みではありますが、糸の性質を知っているからこそ、お客様により良いものを使っていただきたいとの思いで提案しました。葦以外にも、抗菌効果のある梅の種を利用した糸を使用した生地作りの提案や今まで作ってきたナイロンの糸を同じ太さに再利用した生地作りにも取り組んでいます。

葦糸

葦糸(左)を使った子供靴(右)

葦糸を使った子供靴

今後の抱負をお聞かせください。

京田辺に移り住んでから人生の中で最も長い期間を過ごしています。公私ともにお付き合いしていただく方々が圧倒的に多くなり、知っていただく機会も随分増えてきました。だからこそ、仕事もプライベートも含めて、みんなが明るく生きていける場所であり続けることを望んでいます。今後も創業当時から小ロット多品種に対応してきた強みを生かして、お客様の様々な要望に合うよう、より柔軟な姿勢でものづくりに取り組みたいと考えています。

インタビューを終えて

渡辺代表から、オリジナル生地の企画製造販売に至る仕事についてお伺いしました。

『メイドインジャパン以外にはこだわらない』ことにこだわって、日本のものづくりに貢献したいしたいとの熱い思いがとても印象的でした。これからも京田辺を愛する気持ちを生地に乗せて、オリジナルのものづくりを発信していただけることを期待しております。

お問い合わせ

京田辺市役所経済環境部産業振興課

電話: (産業支援)0774-64-1364(商工観光)0774-64-1319

ファックス: 0774-64-1359

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