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【働くキョウタナビト】「株式会社アクア」代表取締役 金子 誠さん

[2024年5月30日]

ID:101

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普段、私達が使うパソコンやスマートホン、テレビ、自動車等の中には様々な半導体や液晶パネルが用途に合わせて使われています。この半導体や液晶パネルは、数多くの製造工程があって完成品となりますが、目に見えないゴミでさえ完成に大きな影響があることや液晶パネルの仕上がりには均一な薄膜成形が欠かせないことから、製造過程では精密な洗浄や液晶の薄膜成形技術が、必要不可欠となります。京田辺市大住にある株式会社アクアでは、この半導体や液晶パネル等の製造過程で使う各種洗浄装置や大気圧プラズマ装置の設計から製造、技術コンサルタント等、幅広くお客様の要望に寄り添った製品作りをはじめとした事業をされています。

「株式会社アクア」代表取締役 金子 誠さん

株式会社アクア 代表取締役 金子 誠さん

株式会社アクア 代表取締役 金子 誠さんに お話をお伺いしました。

起業のきっかけと事業の経緯を教えてください。

この半導体業界に就職したのは、この業界がこれから伸びるという世の中の流れがあり、半導体製造設備の洗浄機製造事業に携わる親戚から営業関係の増員募集があったからです。そこで、約8年間、営業職で勤務していましたが、一緒に働いていた技術職の友達と独立の話になり、会社を起業しました。ただ、半導体製造設備業界は景気の波が大きいので、少しでもその波を和らげるため、従業員が20人くらいになった時に、会社を2つに分けた方がいいかということで、2000年に自社を創業して、機械に携わる設計や組立てをお客様の要望に合わせて幅広く対応できる体制を作っています。今も、その友達の会社とは、事業の連携をしています。

就職当時、ものづくりはあまり得意ではなかったのですが、実際、関わっていくことで、どんどんおもしろくなって、今では、いろいろな工夫を取り入れることで、ものづくりの会社が変わっていくことやものづくりを通してお客様の喜びにつながっているのを非常に実感しています。


社屋の写真

社屋

御社の事業ついて教えてください。

4つの事業展開をしています。樹脂加工が本業で、半導体や液晶の業界に特化したプラスチック系の樹脂で電子部品系の洗浄機械を作っています。この業界で使う機械は、製造過程で、全く目には見えない小さなゴミまでもが、製品の完成に大きく影響するため、かなり精密な洗浄を要します。そこで、自社では、金属を使うと錆が一番のゴミの原因になるので、それを回避できるプラスチック等の樹脂で作っています。この事業では、お客様の要望に合わせて設計図の作成から機械の完成までをする機械製造とお客様からいただく設計図面でプラスチック系の樹脂で作る樹脂加工の2つの事業からなり、基本的にはお客様である装置の製造会社からの依頼があり、自社で下請的に作るというスタイルです。そして、大気圧プラズマ事業では、自社製のブランドとして、いろんな用途開発を含めた製品作りに取り組んでいます。第二技術では半導体や液晶業界の真空プラズマを使った様々な仕事で研究をしている技術顧問が、真空装置系を使う会社のお客様から真空装置等の改良、改造等の要望に丁寧に対応しています。例えば、10年くらい経過した装置を新しくグレードアップする等、お客様の要望に寄り添った形で改良しております。

この4つの事業売上比率を教えてください。

4つの事業売上比率は、現在、樹脂加工事業部が7割、機械製造事業部と大気プラズマ事業部、第二技術部が各1割です。

 

樹脂加工事業部のものづくりの流れと期間を教えてください。

注文のほとんどは、お客様の出される設計図に応じて、自社で部品等、資材の調達をして、組立て完成させて納品します。注文から完成までの期間は、約1週間のもあれば、長いのであれば、約3ヶ月かかるものもあります。基本的にはオーダーメードでお客様の要望に合うものを作っています。それもあって、リピートでご注文をいただくことも多いです。

使う素材は、お客様からの要望に応じて、対応していますが、約7割が塩化ビニールで、他はポリプロピレン、ポリエチレンやフッ素樹脂です。

鉄製の骨組みにプラスチック板を貼付けます

(1)

内側から外側へプラスチック板を貼付けていきます

(2)

内側の洗浄液が入る箇所を液漏れが起こらないように重点的に溶接します

(3)

外側の接合部を綺麗に整えます

(4)

完成です

(5)

製造工程(1)鉄製の骨組みにプラスチック板を貼付けます。

    (2)内側から外側へプラスチック板を貼付けていきます。

    (3)内側の洗浄液が入る箇所を液漏れが起こらないように重点的に溶接します。

    (4)外側の接合部を綺麗に整えます。

    (5)完成です。


お客様との取引のきっかけや御社の強みを教えてください。

この業界はそんなに広くないので、お客様のほとんどはご紹介していただくことでつながっています。というのも、繁忙期とそうでない時期の仕事量の差が大きいので、お客様から依頼される納期に合わせて、同じ事業者同士で仕事の共有をして、お互いの技術を生かした仕事の分担をすることで完成させています。自社だけでは出来ないことでも「みんなで共有できるといいね」というスタンスを大切にして、連携してお客様に満足していただける製品作りができるのが、自社の強みです。


機械製造事業部ではどのような流れで製品作りをされていますか。

樹脂加工事業部と同じ洗浄機械作りですが、ここではお客様の要望に合う設計図を一から作成して、製品を完成しています。

大気圧プラズマ事業部は、どのような思いで立ち上げられたのですか。

一般的には、大気圧プラズマを多く使うケースとして液晶のパネルを作るラインで、ガラスとガラス(専門用語では透明電極とカラーフィルター)の間に液晶を入れることでその部分が、光を通したり、通さなかったり、動作することで液晶テレビが見えますが、いかに液晶を薄く均一に広げるかが、技術を要する部分となり、その為には大気圧プラズマを当てることが有用だというのが分かっています。液晶関係を作る大手の会社は、プラズマ装置を導入していますが、この装置は大型でかなり高額であることから、この装置を導入して、様々な実証をするのは容易ではありません。そこで、自社の技術で装置を小型化にすることで、費用も安価にでき、手に取って実験できるきっかけになるといいなという思いで開発製造しています。大学の研究機関や大手企業の開発チームをはじめ、生産ライン等で数多く使っていただいています。

ハンディータイプ大気プラズマジェット
卓上型大気プラズマジェットテスト機
生産機対応大気プラズマジェット
大気プラズマジェット スポットタイプ

上段左:ハンディータイプ大気プラズマジェット、上段右:卓上型大気プラズマジェットテスト機

下段左:生産機対応大気プラズマジェット、下段右:大気プラズマジェット スポットタイプ

御社の大気圧プラズマ装置は、どのような製品作りに使われているのですか。

車の追突防止カメラやスマートホン等の小型レンズの部分に使うレンズはガラス製の物からプラスチックを使用するのが主流になっています、それはプラスチックの方が大量生産しやすいからなのですが、プラスチックはガラスに比べて熱に弱い、傷が付きやすい、変形しやすい等デメリットも沢山あります。そこでそのデメリットを解消するためプラスチックレンズの表面に5,6層のコーティングを行いプラスチックレンズの補強をしています。UVカットのコーティングやハードコーティング等で保護することが重要となるからです。

ただ、コーティングの際に相性の良い材料ばかりではありません。その施工時にこの大気圧プラズマ装置を使うことで、薄く均一なコーティングを施すことが可能となります。

他にも、大学の研究室や大手企業をはじめとした製品の開発チームで使っていただいており、実際、このプラズマで、どういう現象が起こるかを実証して、製品作りの研究開発に役立てていただいております。今後も、大学との連携含めてより一層、いろんな技術力を磨きあげていき、お客様の要望に応じた小型の大気プラズマ装置を提供していきたいと考えております。

製品作り等をする上で一番、大事にされていることは何ですか。

お客様の気持ちになって一緒に考え、お客様に寄り添ってどれだけ提案できるかというのを一番大事にしています。


現在の従業員数を教えてください。

従業員全体で19名です。営業担当4名、生産管理担当4名、製造担当11名の構成で、新人から勤続20年の人や外国人まで幅広い層でチームワークを大切に働いています。

 
従業員皆さん

従業員の皆さん

今後の採用予定を教えてください。また、入社後、どのような社員教育をされていますか。

状況に応じて、「一から一緒に勉強をしながら技術を磨きませんか」として特に資格を条件にせず、求人をしています。基本的には、ハローワークやご紹介を通じての中途採用がメインになりますが、新卒の方の採用も積極的にしております。

採用後は、基本的に、OJT(※)で社内教育をして、営業担当は営業の先輩、製造担当は製造の先輩について仕事をしながら学んでいただいています。

(※)OJT:日常の業務を通じて、上司や先輩が部下や後輩に対し、仕事に必要な知識や技能等を習得させる実践的かつ効果的な研修手法

京都市内の高校生が見学に来て、当社で説明を受ける様子
京都市内の高校生が当社のプラスチック加工を見学する様子
京都市内の高校生が会社見学で会社説明とプラスチック加工の見学している様子

どのような企業理念に基づいて経営されていますか。

「従業員みんなが、幸せになって欲しい」というのが、一番です。幸せの価値観はみんな違うと思いますが、一人一人の希望を叶えながら、会社全体が少しでも楽しく過ごせる会社を作れればいいなと考えています。年4回の個人面談を実施したり、みんなでBBQ等のレクリエーションをして社員同士のコミュニケーションを大切にしています。

社長が現在、嬉しいと感じられるのはどういう時ですか。

この業界は、景気の波が大きく、10年前に、売上げが減少したことで、やむを得ず従業員を減らすこととなり、雇用を守ることのできなかった時期が、一番苦しく、辛く大変でした。その経験から、従業員を増やさずに何年か経営してきたのですが、いろんな方とお話をしていく中で、私が夢を持って動かないと、会社は成長しないと感じ始めました。会社の規模を求めるよりも、従業員みんなが「一緒に働いていて良かったよね。」と言える会社作りを私自身が考えないとだめだということに気づきました。そのおかげで、今、いろんな方に働いていただき、支えていただいたりしています。一緒に仕事をさせて欲しいというお声をいただくこともあり、より多くの繋がりができているのが、大変嬉しいです。

最後に、今後の事業展開と抱負について教えてください。

半導体の注目度が、上がっている中、半導体を支える自社の仕事も増えると予想されますが、この業界全体で職人さんの数が減っているので、この技術を受け継いでくれる若い方と一緒に仕事をしていきたいと考えていて、新しい人を受け入れながら会社の規模も、もう少し大きくしたいと考えています。あと、創業当時に受注が多かった機械製造事業部で、お客様の相談により深く寄り添った製品作りを拡大することを目標に事業展開をしていきたいと考えています。ただ、製造には、設計から電気部分等の幅広い知識や技術が必要なので、先ほどもお話したように自社の強みである他の事業者さんとの連携を大事にして、お客様の要望に合う製品作りを大切に取り組んでいきたいと考えています。

インタビューを終えて

金子社長から、「従業員みんなが、幸せになって欲しい」という思いで従業員のみなさんとお客様の気持ちに寄り添って、お客様の要望に合うものづくりをされていることと「みんなで働く時間を楽しく共有できるといいね」というスタンスを大切に、同事業者さんとの強いつながりで製品を完成されていることをお伺いしました。今後もこの思いを大事にした半導体業界に欠かせない製品作りをしていただきますよう期待しております。

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