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【働くキョウタナビト】 みやこえのぐ 代表 吉岡晃司さん

[2021年3月17日]

ID:66

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「日本画」とは、日本の伝統的な材料、一般には、墨、鉱石、貝殻、動物、植物などを原料にした絵具と接着剤として膠(にかわ)を混ぜたものを和紙や絹などに描かれた絵画のことを言い、西洋画と区別するために明治以降に生まれた言葉です。そのうち、日本画に多く用いられる「岩絵具」は、複数の色を塗り重ねることでガラス状の粒子による独特の質感と微妙な色合いを表現することができ、見る角度によって粒子に当たる光の加減が変化するため、絵のいろんな表情を楽しむことができます。

大住にある「みやこえのぐ」は、その日本画絵具である「岩絵具」を製造している会社です。

天然の鉱石でつくられる「岩絵具」は希少で高価、色幅が少ないため、そこで考え出されたのが人工的な絵具「新岩絵具」です。色数が豊富で、変色せず、耐久性に優れていることや天然の「岩絵具」よりも安価なため一般的な岩絵具として使われています。

代表 吉岡 晃司さん

代表 吉岡晃司さんにお話を伺いました。

事業を始めらえた経緯、会社を継がれた経緯を教えてください

昭和の初め、祖父が京都市内の絵具屋へ丁稚奉公に行き、絵具工場では胡粉、岩絵具を製造しており、その一部門として、新岩絵具の開発に携わっていました。昭和36年絵具工場より独立し、京都市内に岩絵具専用工場「吉岡絵具製造所」を設立し、父が昭和44年から業務に携わるようになった頃、京田辺市へ工場を移転し「吉岡絵具工業」に名称変更しました。祖父が他界し、昭和50年、私が18才の時に父も若くで他界しました。私が業務に携わって、まだ1年あまりのことで、1ロット分ぐらいしか教えてもらっていなかったので、後は、自分で試行錯誤、失敗を繰り返しながら、製造することになりました。窯も古い窯をつぶしながら、構図を見ながら、全部自分で作り直しました。幸いにも、配合の資料はあり、配合比以外はシンプルなので、何とか乗り越えることができました。でも、手順だけが分かっていても、窯の具合とか、手触りとか、感覚みたいなところ、すべてが難しかったです。平成20年には自社ブランド「みやこえのぐ」を設立し、小売販売を開始しました。



製造工程を教えてください

配合→焼成→粉砕→臼挽→水簸(すいひ)→乾燥→完成(製品)

①配合 原料は陶磁器の釉薬と同じようなもので、焼くとガラス状になります

➁焼成 約1000℃の焼成窯で焼き、ドロドロの溶岩のような状態にします。

③粉砕 冷却すると色ガラス状の塊ができます。それを粉砕機で砕きます。

色ガラス状の塊

④臼挽 更に石臼で挽き潰し、細かい粒子にします。

⑤水簸(すいひ) 水に溶いて比重の差によって粗さを分ける水簸製法にて12段階にします。

⑥乾燥 粗さを分け、分けられた絵具を乾燥します


⑦完成(製品) 袋や瓶につめて、出来上がりです。

貴社の「新岩絵具」の特徴を教えてください。

粉砕という行程は、叩き潰して割っていく構造のスタンパー(粉砕機)を使うのですが、どうしても角が出てきます。「新岩絵具」は基本的に塗っては乾かし、塗っては乾かしで、重ねて描いていくのですが、一端、乾くとサンドペーパーのようになってしまい、その上に描くと筆がこすれて、ダメになってしまうのですが、弊社の「新岩絵具」は、石臼を使って時間をかけて丹念に粉砕しているので、ガラス粒子の角が取れて丸い形に近づくので、使ってみると筆のとおりがよく、絵具の伸びがよくなっています。社章はこの石臼の上臼の裏側を図案化した物です。また、膠(にかわ)との練り合わせ作業中、濁りが出にくいのも特徴です。

社章

原材料の「金属酸化物」と焼き物の「釉薬」とはどのようなものですか。

金属酸化物は、ステンドグラス、サングラスなど色ガラスを作る時に使われるもので、釉薬(ガラス)の中に入れると化学反応を起こして発色する性質があります。この金属酸化物と釉薬との組み合わせで、いろんな色を作ることができます。時々、原材料を混ぜ合わせた物を製品にはできないのかと質問を受けるのですが、原材料を混ぜた色と焼き上がった時の色は異なります。


行程⑤の「水簸(すいひ)製法」とはどのようなものですか?

臼挽きした粒子を粒子の大きさによって12段階に振り分ける作業になります。水に沈んでいるのが粗く、浮いている部分をすくって、次の甕(かめ)に移しかえ、それが次の番手になります。例えていうなら、米のとぎ汁みたいな感じです。といだら、濁ってくるでしょう。米のとぎ汁は捨ててしまいますが、そのとぎ汁を置いていたら粉みたいなのが残ります。米が粗い粒子で、粉みたいなのが、細かい粒子という構造になります。粗い粒子の方が濃い色で、粒子が細かくなるにつれて白い色になります。だから、この一色だけを作るって事ができないのです。


一番難しい行程はどこですか?

窯入れですよね。やはり、火の加減で、色がガラッと変わるので、ここを失敗すると、最終的に色がずれてきます。時間もそうですが、温度とガスで変わってきます。それと、経験ですね。


これからの「新岩絵具」について

「新岩絵具」は「日本画」を始め、神社仏閣の修復にも使われたりもする、なくてはならない絵具ですが、取扱いが難しいとされています。「日本画」をいざ始めようと思っても、専門の芸術で、非常に敷居が高いと感じる方が多いので、そういう方には綺麗な絵、いい絵を見てもらい、「日本画」そのものに興味を持ってもらうことが、ひいては「新岩絵具」の発展に繋がると思います。

製造色一覧

新岩絵具 製造色一覧

「日本画」は、豊かな自然の恵みと「春」「夏」「秋」「冬」と移りゆく四季、日本人の繊細な感性から作品が生まれてきたのだと思います。それは、「岩絵具」の色名である「日本の伝統色」にも表現されています。微妙な色味それぞれに名前が付き、名前を聞くだけでどんな色なのか思い浮かぶ、とても綺麗で素敵な名前ばかりです。

京都・奈良には「日本画」をみることのできる美術館がたくさんあります。時には、「日本画」の色の世界を感じに美術館へ足を運んでみませんか?

「みやこえのぐ」公式ホームページ(別ウインドウで開く)

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