【働くキョウタナビト】北岡唐木工芸 北岡進さん
[2017年9月25日]
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京田辺市内のものづくり企業で働く人にスポットをあてご紹介する『働くキョウタナビト』。
今回は京田辺市大住に工房を構える通産大臣認定の伝統工芸士 北岡進さんに話を伺いました。
平成16年秋に八幡内里より移転、現在の京田辺市大住に工房を構え、お一人で唐木製品の修理、製造、販売を手がけていらっしゃいます。
唐木(からき)とは紫檀や花梨などの木のことで、元々は中国から輸入されていたことからその名前がつきました。堅い材質で、色合い、光沢が美しく、古くから仏壇や家具等に使われていますが、現在は輸入禁止の為なかなか手に入らない貴重な木材です。
伝統工芸士とお聞きし厳しい職人肌の方を想像していたのですが、お会いしてみると穏やかな方でした。
17歳でこの道に入られたものの、最初は材料の準備など下仕事ばかり任されていたという北岡進さん。与えられた仕事をきっちりこなし、人が見ていないところでも手を抜かない。徹底した仕事ぶりが親方に認められ工場長に抜擢されます。
「きちんと仕事をすることで信用を得ることができる。」
長い下積み時代の経験があらゆることの原点として、今も生きているのだそうです。
おだやかな笑顔の北岡さん
独立されてからも、〝お金儲けに走ると品質が落ちる″と製作数を減らし寝る間を削り、『納得いくものづくりをする』という姿勢を徹底して貫かれました。
とはいえ独立したての新参者に入り込むスペースは無く、簡単には売れません。販路を開拓するために、他にはないデザインのオリジナル製品を作るなど試行錯誤を繰り返し、少しずつ軌道に乗ることができたのだそうです。
販売数が増えても妥協をゆるさぬ強い信念は揺らぐことなく、今も納得のいく作品づくりを続けていらっしゃいます。
漆を納得いくまで何度も塗りなおした机
仕事の話になると職人の顔に
「お金がなくても信用があれば生きていける。」
80歳を越えた今、そんな風に思うのだそうです。
それは60代、70代ではわからなかったこと。今だからこそはっきりと言えること。
北岡さんの言葉には、貫いてきた姿勢に間違いがなかったという強い思いが感じられました。
先日30年前に注文を受けたお客様が『同じ職人さんにお願いしたい』とご指名、再注文が入ったのだそうです。
職人冥利に尽きることだとしみじみ話してくださいました。
休日も頭の片隅には仕事が離れず、アイデアがひらめくとすぐに製作に取りかかりたくなる北岡さん。
「旅先でビルを眺めるうち注文を受けていた椅子のデザインがひらめき帰りたくなった」と笑って仰いました。
御年80歳を越えるとは思えぬバイタリティで、今も毎日工房に通い、ひたむきに唐木と向き合う日々を送っていらっしゃいます。
試作品を手にする北岡さん
使い込まれた機械が美しい工房内